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人気投資バラエティ「マネーの虎」。その中でも多くの人の心に残る回がありました。それが、日本でケバブ屋さんを開きたいという2人の外国人のお話です。
マネーの虎といえば、未熟な志願者が厳しい社長にボロクソに言われる場面が印象深いんですけど、この回はまた異例で、真面目で真剣な志願者に社長も、見ている僕たちも応援したくなるような、心温まる回でした。
ということで今日はその放送の一部始終と、マネー獲得したその後。そして現在の状況までをまとめてみました。
目次
トルコのファーストフード「ケバブ」の開店資金 1800万円希望
トルコでは一般的なファーストフードである「ケバブ」を日本で流行らせたいと、2人の外国人大学院生が志願しました。志願者に外国人が来ることは意外と珍しいことではなく、今までにもマネーの虎にはたくさんの外国人が来ましたが、日本語が苦手で想いが伝わりきれなかったり、考え方の違いなどで成功率は低め。しかし今回は序盤からいつもと違った空気が流れます。
志願者 メスット・シェネル 当時24歳
右側が志願者でありリーダーのシェネルさん。左側のしぶいヒゲの男はサポート役の後輩くん(22歳)。なんか外国人って大人に見えますよね。こう見えても大学生の二人です。
シェネルさんはトルコで生まれ育ち、17歳の時に高校から奨学金を受けて、5人の仲間と共に日本にきました。もちろんお金もなく、アパートの一室に6人で生活し、少ない食料を分け合いながら生活をし、電車にも乗れないので2,3駅歩くことは当たり前でした。
しかしそんな過酷な中でも必死に日本語を学び、日本人との関わりや学問を学んでいるうちに、「日本人より日本を好き」になります。しかし、「トルコ人は日本のことが好きなのに日本人はトルコのことを何も知らない」ということから、日本との友好親善を強く想うようになります。そして今回はその一つの架け橋として、トルコのファーストフードを日本で広めたいという夢を引っさげて志願しました。
金を出さない頑固社長 堀之内九一郎
(株式会社生活創庫代表取締役、年商102億)放送当時
今までに30業種以上の事業を始めては潰し、一度はホームレスにもなった。しかしホームレス時に捨ててあったゴミを修理したところそれが仲間に売れ、それをきっかけにリサイクル事業を立ち上げ、年商100億を超える大企業にまで育て上げた。
今までのいくつもの失敗の経験から、未熟な志願者や甘いプランにはキツく説教し、絶対にお金を出さない頑固さが有名で、志願者だけでなく、社長同士でも言い合いになることが多い。
しかし若い外国人の2人に何故かこの頑固な虎がメロメロになる・・・。
脱体育会系の優しいイケメン社長 貞廣一鑑
(株式会社ラヴ(現:Jellyfish.株式会社)代表取締役CEO、年商25億)放送当時
カフェやインテリアなど数多くのお店をプロデュースし、かつ空手道5段、DJもやってるイケメン社長。
自衛官の親に厳しく育てられたことの反動からか、とても温厚な性格で、どんな時も感情的にならずにやさしく諭す「脱・体育会系」というスタンスを持つが、思ったことや違うと思ったことはハッキリと貫き通す熱い一面も。
特に人間性を重視する貞廣社長は、志願者の態度が悪かったりちょっとお金に汚いような部分が見えた時には正面からぶつかっていく場面が多いが今回は・・・!?
泣く子をさらに泣かす激情家 小林敬
(株式会社小林事務所代表取締役(出演当時)、年商65億)
㈱小林事務所代表取締役であり、創作料理を中心に全国展開をし年商56億円をたたき出した飲食フランチャイズの虎。他にもトータルフードプロデュースとして様々な事業に携わり、CASジャパンの取締役にも就任した。
とにかく志願者のプランを最も厳しく見定め、少しでも甘い部分があると専門的な知識で相手を追い詰めていき、態度が悪い志願者に対しては「こっち見ろ馬鹿野郎」「ふざけんな馬鹿野郎」と怒鳴りつけ場を凍り付かせることもしばしば。
もし自分がマネーの虎に出たとして小林社長に当たったら「終わった・・・」と思わざる負えないマネーの虎一厳しい社長を見事口説き落とすことが出来るのか・・・!?
第一章:プレゼン開始!!
世界3大料理の1つであるケバブを日本で広めたいと1800万円を希望しました。
トルコではポピュラーな食べ物であり、日本人でも食べたらみんなが美味しいというケバブが日本で流行らないわけはないということでプレゼンを開始します。
ケバブ。名前は知っていますよね。食べたこともあります。お祭りとかでもそうだしたまに屋台で見かけますよね。僕も好きです。
しかし、そうであってもなかなか流行ってはいませんよね。そこを付く社長ですが、シェネルさんも負けません。
ケバブが流行りきっていないのはお店が少ないから。自分がフランチャイズで全国展開することで、日本で流行らせることが出来るんだといいます。
さらに 「牛丼やハンバーガーと同じような料金でどこでも食べられるならケバブを食べると思います」というシェネルさんに対して「そんなに美味しいんですか?」と聞くと
すごい自信ですね!確かにこう強く断言されると本当においしそう!食べてみたくなりますね。お腹減ってきました。
そして後輩君も「こんなにロープライスでおいしいケバブの店をまだ誰も広めていないのは隙間産業であり、それをやろうとしているのはシェネル先輩だけなんです!」と熱く後押しします。
ちなみに、マネーの虎に出てくる外国人は結構片言だったりするんですけど、この2人は日本語。しかも敬語がしっかりと話せていてビックリです。下手したら僕よりキレイな日本語をゆったりと落ち着いて話します。
また腰も低く、社長の言葉をしっかりと聞く姿勢があり、社長達はもちろん視聴者にも好感触。安心してプランを聞けるし、真剣さも伝わりますよね。
いつもは厳しい堀之内社長も、自信満々の彼らを見て、珍しく顔がほころんでいます(笑)
そして、シェネルさんのことを「シェネル先輩」と呼んだ後輩君を見て二人の信頼関係を感じ、貞廣社長もすでに落ちちゃってます。
キーマンは飲食フランチャイズの虎
さらにトルコ料理を日本でも親しみのあるものにするために「ケバ丼」というケバブの丼物のメニューも考えていました。
しかし、一杯440円という価格を聞いて小林社長もつっこみます。
やはりフランチャイズ展開に関してはプロである小林社長。この虎を落とすことが出来ればかなり心強い味方となりますよね。しかし、このマネーの虎で同業種に投資をするのはかなりのリスクがあります。
飲食のプロと言われる人が飲食に投資をしてもし失敗したら、信用を失います。見る目が無かったと思われますし、成功のノウハウが嘘だったとも捉えられてしまいますからね。
そんなこともあってか、シェネルさんの人柄に心動かされている2人の社長とは裏腹に、プランをしっかりとツッコんで行く小林社長。いつもより真剣な表情ですが、彼らのことは気に入っているようです。
こば「えっ!もう出すの!?」
慎重に細かいところを計算している小林社長を横目に、2人の社長がニコニコしながらお金を出しました。
まずは堀之内社長。
「飲食の事はなんもわかんないけど、君たちが気に入った!」とポロッとお金を出しました。それを見てさすがに小林社長も「もう出すの!?」と、慌てます。
小林社長から見たら、そう思う気持ちも分かりますね(笑)気楽にあっさり出した堀之内社長は、投資というよりは頑張る彼らにお金をあげるような感覚でしょうか。
さらに、それに続いて貞廣社長も共同投資をします。
「つまんない車買うんだったらアナタ達に懸けた方がいい」
これは貞廣社長がよく言う言葉ですね。かっこいいセリフですが、左に座っている南原社長は車屋さんです・・・「つまんない車」って|д゚)
ちなみにこの番組ではこんな感じで、料理も細かいプランも聞かずにあっさり投資する場面もちらほらあります。でも逆に考えると、自分がもし成功してお金を持っている状態で、頑張っている若者を見たらお金を出したくなっちゃうのかもしれませんね。上手く行くかはわからないけど、夢に向かって頑張る人を応援したい。成功者だからこその考えなのかもしれません。
残り800万円!マネー成立なるのか?!
希望額1800万円の内300万円を投資すると堀之内社長。貞廣社長は500万円出すといい、「堀之内社長も出してくださいよ」とお願いし、2人で500万円づつ。計1000万円の投資が確定しました。残り800万円です。
このマネーの虎では共同投資することもしばしば見られます。こうなった場合は社長達の話し合いで決まりますが、今回は貞廣社長がこんな提案をします。
「僕たちは飲食の素人ですが応援したい気持ちがあるので投資します。だけどやっぱりアドバイスは出来ないのでフランチャイズのプロである小林社長にも出して頂きたい」
その提案に小林社長は無言で考え込みます。
いざ試食
悩む小林社長。失敗は出来ませんしプレッシャーは他の社長の比ではありませんのでそうそうとお金を出せません。
そこで、まずはその「そんなに美味しいケバブ」を食べてみようということになりました。
本場の料理人にレシピを作らせたというケバブ。もう美味しいのは決まってますね。
そして見たことのあるコレ
クルクル回る肉の塊をそぎ落としていきます。超ウマソウ!
そして完成したケバブサンド。
そしてケバ丼です。
画質が悪くてすいませんが、味は社長達の顔を見れば一目瞭然です。
そして無類のケバブ好き「ケバブ栄ちゃん」もこの様子。
本当にうまそうに食べるんですよね笑 栄ちゃんも司会者なのにお金を出しそうな勢いです笑
味にうるさく、試食であまり完食することのないこの虎も絶賛!
しかしその中で、味だけじゃなく細かい材料などを観察し、難しそうな表情で考え込みながら試食をする小林社長がいました。
そして決断の時
そして決断の時です。試食を終えた小林社長からはこんな言葉が。
もう少しターゲットを明確にし、材料にも工夫をしなくてはならない。そして、ケバブサンドと丼物を同じターゲットに出すのは無理があるとプランの甘さを指摘します。
ただ美味いだけではいけない。原価をかけずに効率よく作れて、一度ではなく何度も足を運んでもらうような工夫をしなくてはならない。そんな言葉から、フランチャイズ展開の厳しさを教えます。
が、しかし
まだまだ甘いところはたくさんあるけど、君たちも応援したい。色々口を出してもいいならお金を出すと決心しました。
そして・・・!!
おめでとうございます!!!
見事マネーを勝ち取りました!しかも外国人の大学院生が、なんとあの小林社長からお金を出させたというのはもう快挙としか言いようがありません。
真面目で真剣な姿勢。そして、日本人より好きになった日本に自分の国の良さを伝えたいという熱い思いが伝わった瞬間ですね。
第二章:マネー獲得その後
番組終了から2年半が経ったころ、「あれから2年半。虎と獲得者は今」という特別番組でシェネルさんのその後が放送されました。
まず番組スタッフが堀之内社長のもとへ向かい、その後と現状を伺います。
マネー成立後はケバブの店舗を作る予定でしたが、当時はシェネルさんも学生だったこともありなかなかスムーズに行かなかったのですが、赤レンガ倉庫にお店を無事出しているという事でした。
そしてそのお店を見に行くことになります。
・・・が!?
見えてきたのは1800万円を獲得して作ったというような立派なお店ではなく、小さな屋台でした。
そして、2年ぶりに会ったシェネルさんに話を伺います。
「マネー獲得後、堀之内社長と貞廣社長と話し合い、焦らずにまずは会社を作ろうということになりました。」と言うシェネルさん。
そして卒業後は堀之内社長の紹介で表参道にオフィスが完成。グットスタートカンパニーという会社を立ち上げました。
さらに、「チャリック・ホールディング」というトルコの大手企業の社長にコネがあったシェネルさんがこの企画を伝えたところ、「トルコの若者がたくさんの勉強をし、遠い日本で起業するという志に感銘を受けた。」と言い1億円の投資が決まりました。
そしてまもなく本格的に全国展開を目指す意思を伝えます。
お店は流行の最先端である渋谷センター街に出店が決まっていて、これからの活躍に期待が高まりながら放送は終了しました。
小林社長の名前が出ない謎
その後を見て違和感が一つありました。それは、あれだけキーマンだった小林社長の名前が出てこないこと。
かなり口を出して徹底的にやって行くと言っていた小林社長との絡みがメインだと思っていたので、本人はもちろん名前すら出てこないし、さらにトルコの別の社長からも投資を受けているということは何かあったのか?と思わせます。
実は後日談ですが、小林社長はその後、大きい企画に失敗をして倒産しました。(詳しくは<コチラの記事>で紹介しています。)
丁度その時期と重なっているために、投資後はそれどころじゃなくなってしまっていたのかもしれません。もしかしたら投資も途中で断ったのかもという推測も出来ますが、真実は明かされないまま放送は終了しました。
最終章:現在
その後、見事渋谷のセンター街に開店し、他にも数店出しました。
リーズナブルな価格と、虎も絶賛するほどの味。そして、屋台ではなく店舗でいつでも食べれる新しい形のケバブがとても人気を呼び大ヒットしました。
しかし・・・
シェネルさんの死。お店は閉店へ
2010年6月18日。埼玉県川口市でジョギング中だったシェネルさんが急性心不全を起こし亡くなりました。当時31歳という若さでした。
遊びたい盛りの20代なのに常にトルコと日本の友好のことだけを考えていて、人の喜ぶ顔を見て幸せを感じるような人だったというシェネルさんは、トルコからの留学生に奨学金を出す活動を始めていて、ケバブのお店で得た利益のほとんどはこちらに寄付をしていたそうです。
さらに、昔トルコの艦船が沈没した時に日本人が看病した友好物語がマンガ化されたものを、シェネルさんがボランティアで翻訳し、トルコ版として発売もさせました。これが最後の友好親善活動となったそうです。
そんなシェネルさんを地元メディアが報じ、多くの追悼の人々であふれました。
まとめ
誰かが「こういう人がなぜか短命で、悪いやつだけが生き残る」なんて言っていたことを思い出しました。本当にこんなに真面目で自分より他人のために頑張れる人はいませんよね。貞廣社長と堀之内社長が「本物だ」と言っていたのですが、それが真実だったことが証明され、本当に惜しい人をなくしたのだと思います。
しかし、シェネルさんに関わった人や家族、そしてボランティア活動により助けられた多くのトルコ留学生たちにはしっかりとその想いが伝わり、受け継がれていくのだと思います。
起業は目的ではなく手段だと言います。お金や名誉のためではなく、自分が本当にしたいことや夢。それを達成するために行動していたシェネルさんは、周りが喜んでくれた時は本当に幸せそうで達成感のある顔をしていたそうです。
そしてその一部始終を見ていた僕たちも、こんな人がいたという事を忘れずに、自分のためじゃなく誰かのためになるような仕事をしていきたいですね。
ご冥福をお祈り申し上げます。