心温まるマネーの虎のパスタの回 その後から現在までまとめてみた

マネーの虎ってどんなイメージがありますか?

人によって違うと思うし、見た事ない人もいるかもしれませんけど、大体は

「偉そうな社長が素人をボコボコにする番組」

的なイメージが強いと思います。まぁだいたい合ってますよね。

当時は他にもTOKIOがやってるガチンコファイトクラブが流行ってましたけど、とにかく本気で怒鳴りあったり喧嘩したりする。

そんな本気って感じが見てて熱くなると人気だったんですよね。まるで格闘技を見ている時に近い感覚を味わえるバラエティです。

と、そんなマネーの虎なんですけど、とっても有名な回があります。それが「パスタの回」ですね。パスタ屋さんをやりたいと志願した男の回です。

普段は稼ぐことで頭がいっぱいになった志願者に虎と呼ばれる社長達が指摘、否定をし、時には罵声を浴びせる起業家達の戦場のような様子なんですけど、この回はいつもと違いました。

この志願者。多額のお金を希望しているのに関わらず「お金はいらない。儲けることは考えてない!」と虎を挑発します。

果たしてこの志願者は偽善者なのか。虎達は金を出すのか。そして、放送終了後に起きた事件も合わせてまとめてみたので是非ご覧ください。

世界一のピザとパスタのレストラン

世界一のパスタとピザの店を作る男 マネーの虎 - YouTube (2)

志願者はこの時なんと無職だった立花洋さん(当時44歳)。

世界で一番お客様のことを考えたレストランを開業したいと980万円を希望します。

投資を決めるのはこの5人の社長達です。

  • 金を出さない事で有名な頑固社長「堀之内九一郎」
  • 美空ひばりの息子である若き社長「加藤和也」
  • なんでんかんでんラーメンの火付け役「川原ひろし」
  • 生半可なプランには厳しい冷徹な虎「南原竜樹」
  • 監獄レストランを広めたやり手社長「安田久」

先にルールを簡単に説明すると、志願者が5人の虎にビジネスプランをプレゼンし、納得させることが出来ればそのお金を手に入れることが出来ます。

しかし1円でも希望額に達しなかった場合や、言ったことにウソや偽りがあった場合はマネー不成立になります。

プレゼン開始!お客様第一のレストランを作りたい

今巷にあるレストランはどこも原価が20%を切っていている。例えば麺だけなら2,30円だし、具材も安い物を使っているくせに1000以上の値段で出していることに、もはや「ぼったくりやないかい」と強い感情を表します。

そこで、材料も冷凍物やレトルトを使わずに、素材から仕込んでちゃんと料理をし、本当に美味しい物を、しっかりとした値段で出す。店の利益ではなくお客様のことを本当に考えたお店を出したいとプレゼンを始めました。

するとちょうどパスタ屋をやろうと思ってた安田社長がまず興味を示し、細かいビジネスプランを質問していきます。

世界一のパスタとピザの店を作る男 マネーの虎 - YouTube (4)

世界一というくらいだから、どれだけ画期的なアイデアや工夫があるのかと視線を向ける虎達。しかし、立花さんの口から出たのは「店の中心に厨房を作って店全体を見渡せるような状態を作り、すぐにお客様の注文に気付ける店にしたい」という答えが。

それには南原社長も、「それじゃそこら辺にあるラーメン屋と同じだ」とツッコみを入れます。

ちなみに横にいたラーメン屋の川原社長↓

世界一のパスタとピザの店を作る男 マネーの虎 - YouTube (3)

川原社長と南原社長は犬猿の仲で、しょっちゅうケンカをしているので、南原社長も多分ワザとだし、川原社長も”そこら辺のラーメン屋”というキーワードに過剰に反応しています笑

南原「もっと驚かせて下さいよ」

世界一のパスタとピザの店を作る男 マネーの虎 - YouTube (1)「世界一のお店を作るのであれば、「これは他の人には真似できないことなんだ」とか「こんなサービスは誰もやってない」というような、他のお店と比べて秀でているところをアピールしてもらわないとお金は出ないよ」

という南原社長に対し、少し言葉を詰まらせてから、こう話しました。

今まで長い間レストランで働いてきたが、どの店も会社が大きくなるにつれ社長の目が変わってきた。

経営理念には「お客様第一」と掲げているくせに、利益追求に走る。

もっと原価を上げれば、もっと手間をかければ、もっと美味しいものが出来るのにそれをしない。

本当にお客様のことを思ってやっている会社なんてどこにもなかった。

そして私は精いっぱいのサービスでお客様を必ず笑顔にする自信がある。

その言葉を真剣な眼差しで見つめる一人の虎がいました。

加藤「この人だったら出してもいい」

世界一のパスタとピザの店を作る男 マネーの虎 - YouTube (7)

立花さんには、なにも画期的なアイデアもなけば儲かる仕組みもありませんでした。

ただただシンプルに、お客様の笑顔を大事にしたいという強い想い一つでここに来たのだと思います。

しかしその言葉を始めは誰も信じられませんでした。

なぜなら起業する人の口からは良いことが出ても、頭の中には必ず「金儲け」という想いがあるということを知っているからです。

だけど、いつまでたってもその想いが見えず、立花さんの本気の想いが見えてきた時に、加藤社長が口を開きました。

「おれこの人になら出してもいいな。」

安田「利益ないぞ?大丈夫」

それに対して安田社長。

「確かに原価をかければ美味しい物は出来るし言ってることは分かる。だけどやっぱり経営者になれば従業員もいる。儲けが出なけりゃ給料も払えないし、利益を求めるのは大事なことだと思うんだけど、立花さんは儲けたくはないの?」

と問い詰めます。

確かにそうですよね。ボランティアじゃないし980万円もかけるのだから、「やりたいことはあと。まずは儲けてから」という想いも間違いではない気がします。

しかし、立花さんは「儲けは考えてませんつ!」とキッパリ。

堀之内社長も合わせて「経営者にとって一番大事なことはなんですか?」と質問しますが、「お客様の笑顔です!」と間を開けずに即答。

なにを聞かれてもお客様のことだけを第一にすると強く断言しました。

世界一のパスタとピザの店を作る男 マネーの虎 - YouTube (8)

そしてマネー成立!

会社の利益を考えずに、原価をかけた美味しいパスタを安く売る。確かにそれは良いことですけど、利益がないところに1000万円近くのお金はなかなか出せません。

しかし、立花さんの想いを聞き、そんなお店をこの人なら作れると確信した加藤社長は全額投資を決めました。

その際に安田社長が「加藤君大丈夫?これ儲け出ないよ?」と確認しますが、全然へーきですよと加藤社長。

その顔は本当に不安な色はなく、「みんな何を気にしてるんだろう」というようなキョロっとした表情で、ポロっとお金を渡しました。

とにかくおめでとうございます。これから先、どうなるかがとっても楽しみです。

世界一のパスタとピザの店を作る男 マネーの虎 - YouTube (6)

 

その後

世界一のパスタ屋 開業物語 マネーの虎 - YouTube (10)

マネー成立後、一息つく間もなく、さっそくお店の開店準備が始まりました。

奥さんと共にお金をやりくりしながら、予想以上の出費や問題も出て来ながらもなんとかお店が出来上がりました。

そしてオープンの日になります。

世界一のパスタ屋 開業物語 マネーの虎 - YouTube (5)めっちゃ笑顔の立花さんです。もうちょっとガチガチのレストランを想像してたんですけど、キャップにTシャツのカジュアルスタイルで、お店もオシャレです。

世界一のパスタ屋 開業物語 マネーの虎 - YouTube (3)

思っていた理想に近い状態で作れたカウンター付き全44席のお店。

予算の問題で念願のテラスは作れませんでしたが、天井まで凝っててオシャレですよね。なんだかこっちまでワクワクしてきます。

そしてこちらがパスタです。

世界一のパスタ屋 開業物語 マネーの虎 - YouTube (2)

ナスとベーコンのパスタ。具が大きくてタップリ入っています。食べたい・・・。

いよいよオープン!

そしていよいよオープン。間もなくしてお客さんでいっぱいになりました。

しかし、ちょっと待ってください。マネーの虎でマネー成立した場合は一つの決まり事があります。

それは、開店日に売上ノルマを決めるということです。

志願者が絶対売れるとプレゼンし、それに賛同して投資が成立するわけですが、

  • そのプランが本当に売れるアイデアだったのか。
  • 志願者の言ってたことは本当だったのか。
  • そして投資した社長の見る目は間違っていなかったのか。

その結果が分かる瞬間がこのオープン日なんですね。緊張が高まります。

そして立花さんが立ち上げたノルマは、

来客数120人 売上15万円!

世界一のパスタ屋 開業物語 マネーの虎 - YouTube (4)

ちょっと言い過ぎなナレーションが流れますが(ドブって・・・)、ノルマは15万円。一日で120人もの人を呼ばなくてはなりません。

「ノルマは達成出来なかったけどお客様の笑顔が見れて良かった(`・ω・´)キリッ」

なんてオチは本当に茶番ですよね。お客様への想いが結果としても残ることを誰もが望んでますし、儲からないと言われても出資してくれた加藤社長の顔だけはつぶせません。

そして緊張の一瞬が刻々と過ぎ、閉店時間を迎えました。

 結果発表!ノルマは達成出来たのか!?

世界一のパスタ屋 開業物語 マネーの虎 - YouTube (6)

閉店後加藤社長が到着。とりあえずはオープンまでを振り返りました。

立花さんはこれまで辛かったことや大変だったけどここまで来れたことを語り、加藤社長も本当に良かったなと表情を緩めます。

・・・と!ここでまたあの酷いナレーションが!!

「しかし、そんな浪花節を聞きに来たのではない・・・」

金が全てだということで、気持ちを切り替えての結果発表です笑

結果は・・・

 

世界一のパスタ屋 開業物語 マネーの虎 - YouTube (7)

おめでとうございます!!全然余裕の目標達成です!!!

加藤社長も栄ちゃんも祝福の言葉をかけます。

世界一のパスタ屋 開業物語 マネーの虎 - YouTube (9)

そして、これから先も末永く続いて行けるように。

そして、「世界一のパスタ屋を作りたい」という夢を叶えられるようにと言葉を贈り、番組は終了しました。

世界一のパスタ屋 開業物語 マネーの虎 - YouTube (8)

 

その後のその後

【志願者のその後特集 第1弾】 - YouTube (1)

オープンから1年4ヶ月経った頃。大体2004年くらいのことですね。再度立花さんの様子を見に行くと、早くも2号店をオープンさせていました。

1号店よりも2割大きいお店には念願のテラス付き。社員も7人。バイトを入れたら19人にまで増えて、年商は2店舗入れてなんと

1億円!!

【志願者のその後特集 第1弾】 - YouTube

「無職だった私に社長をやらせていただいて、理想のお店で社員にボーナスが払えました!」

と嬉しそうに語る立花さん。とっても幸せそうで、なにより楽しそうでした。

 

そして現在は!?

それからさらに10年以上経った現在は、

  • 茅ヶ崎本店
  • 平塚海岸通り店
  • 鎌倉芸術館通り店
  • The COOPER’S CAFE

の4店舗にまで増え、年商はなんと2億2000万円以上!

大成功してるお店はコチラです⇩

ピザ&パスタの専門店 ラ・パットーラ

従業員も50人を超え、お店ではバンドを呼んでライブをやったりイベントもやったりと、かなり盛り上がってるみたいです!

 

ちなみにメニューを見ましたが、地方から取り寄せた新鮮具材を使い、手作りで手間暇かけた美味しいパスタが600円~1200円という値段。経営者になっても全然考え方が変わってなくて笑いました。

お店に掲げられた

「お客様のことを考えること。それが私達の仕事です」

という言葉。

これが本当だということを、10年以上にわたり見事証明しました。拍手!

 

まとめ ~それとは逆に虎達が続々と倒産していった件について

とっても良いお話でしたね。本当にいつものギスギスして罵声が飛び交うマネーの虎とはまったく異なる心温まるお話でした。

しかし、実はこの話には後日談があったんです。それは、マネーの虎が放送を終了して、何年か経ったある日、絶対的な成功者として出ていた虎達が続々と倒産していったのです。

さらに注目なのが、このパスタの回に出ていた5人の社長のうち、立花さんに投資した加藤社長以外の4人全員が倒産していたということです。詳しくはコチラ<マネーの虎に出てた6人の社長がその後に転落した理由を推察してみた

そして「あの頃偉そうにしてた社長が倒産して、否定されていた志願者が成功した」と話題になりました。

そんな出来事を踏まえて見返してみると、今回立花さんが成功したことにより、10年かけて昔のビジネス界の常識を覆す2つのことが証明されたように思えました。

結果はあとから付いてくる

社長達を見たイメージだと、特に批判をされていたわけではない気がします。どの社長も、立花さんのその気持ちは理解していました。

しかし、経営者である虎達の経験上、それだけでは成功出来ないという思いが強かったのだと思います。

特に安田社長に関しては、社長になって稼ぎたいと起業し、誰もやってないことでビジネスを成功させている社長なので、「儲けたいから社長になるんじゃないの?」と言ったのも分かる気がしますね。

ですが、今回に関しては社長達よりも、誤解を恐れずに言わせてもらうと立花さんが変人すぎたのかなと、思ってしまいます。

自分が44歳だとして、無職でお金がない状態を思い浮かべて下さい。約1000万円の借金をしてまで誰かのためのビジネスを始めようと思えますか?

見ている僕も正直始めは疑ってしまいました。ボランティアじゃないんだし、借金するからには何が何でも稼がないといけなくなるんじゃないの?と、安田社長と同じ意見でもありました。

安田社長が事業計画書を見ながら「大丈夫?儲からないよ?」と言っていたので、本当に薄利なプランだったんだと思います。そりゃあ儲けを減らせば美味しい物は作れるだろうけど、それじゃー店が持たないだろ!と思うのは当然ですよね。

 

「お客様第一ではダメだ」なんてことはもちろん思いません。しかし他の社長は「お客様第一だけではダメだ」と思っていたのだと思います。

そして、他の店との違いを聞かれて「お客様を思う気持ちです」の一点張りだった今回のプランはまさに「お客様第一だけのプラン」。今回の成功で、まさにこの想いだけでも成功出来るんだという証明になった気がしています。

『お金を先に追ってはいけない。まずは相手のために自分が出来ることを精いっぱいしてあげる。そうすると結果は必ず後から付いてくる。』

ビジネスに関わらず、とても教訓にしたいことです。

金持ち=成功者?

立花さんの現在を見てとてもいいなと思ったのが、お店が4店舗ということ。

一見少ないと感じるかもしれません。しかし、もしこのお店が10店舗、20店舗と広げてしまった場合、お客様第一の理念を貫けるのかは疑問です。

お店がたくさんあった場合、もし売上不振になった時のダメージもお店の分だけ大きくなりますよね。もしそうなったらリストラするなり原価を下げなくてはいけなくなりそうです。

しかし自分の手の届く数で経営をしていれば、細かいテコ入れも出来ますし、売上が減って辛い環境になったとしてもお店が少なければ耐えることが出来ます。

小さくても4店舗、きっと立花さんは自分の想いをしっかりと引き継いだ信頼出来るスタッフに囲まれて、お客様の笑顔をリアルに感じられていると思います。

それは、「どれだけ全国展開したか」ということだけが成功ではないということを証明しているように思えます。