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これまでにマネーの虎では数多くの志願者達が出場しましたが、その中でも特に話題になったのがチャンコ増田氏の「今まで誰も作ったことのない抱き枕を作りたい」という回です。
「アニメやアイドルの等身大の抱き枕を作りたい」という想いを語ったチャンコ増田氏は、これからビッグビジネスに広がっていく可能性をプレゼンしましたが、社長達に思いは伝わらずあえなくノーマネーでフィニッシュしてしまいました。
真面目な場にオタクが出てきたことと、抱き枕を持ってきて目の前で抱いたという衝撃で現場は荒れましたが、放送終了後はネットでもっと荒れました。もちろん批判だったり面白がってネタにしているのがほとんどですが、今回注目したいのは次の意見。
10年経った今、オタク文化はもはや一般化し、
「もしかしてチャンコ増田、先見の明があったんじゃね」
という疑問が浮かび上がりました。
- 「オタクとは付き合いたくもない!」
- 「抱き枕なんて気持ち悪い!」
的な感じで見向きもされなかったアイデアでしたが、もしかしたら社長達はあの時大きなチャンスを逃したのかもしれないと口論が続いています。
そんなわけで今日は、チャンコ増田氏のビジネスプランは本当に批判されるようなアイデアだったのか。社長達に「時間の無駄だった」と言われるほどのプレゼンだったのか、そして10年経った今冷静にみてこのビジネスプランはどうだったのか推察していきます。
ちなみに、10年以上前のことを今さら持ってきて、こんなこと真面目に推察する意味があるのかと思うかもしれませんが、なんで書くのかって書きたいから書くんですよ!
それではいってみましょー!
目次
アニメ・アイドルの抱き枕を作りたい チャンコ増田
志願者は増田学さん。太ってるから「チャンコ増田」っていうあだ名が付いたそうです。
内容をざっとまとめると、
- 当時はどこにもなかった等身大の抱き枕を作りたい
- 有名ゲーム誌ファミ通で働いてた経験がある
- 実際にグッズを作り、3時間で200万円売った
- オタクに偏見があると思うけど外人は「オタクイズビューティフル」と言っている
- コミックマーケットには45万人も集まっていてすごい市場である
- 結局売れるとかじゃなくて欲しいから作んですよ!と言った
それに対して社長達の反応は
- 加藤(美空ひばりの息子)「オタクでナンボだよね」
- 川原(なんでんかんでん)「ちょっとおれに抱かせてよ」
- 高橋(ソフトオンデマンド)「経営者はオタクに偏見持たない」
- 堀之内(元ホームレス)「オタクとは付き合いもしたくない」
- 小林(謙虚ライオン)「この時間はなんだったんですかね?ふざけんな馬鹿野郎って言いますわ!」
小林社長・堀之内社長はドン引き、川原社長、加藤社長は興味を持って聞いていましたが落とせませんでした。
いつも厳しい高橋社長は、偏見を持たずに紳士な態度で冷静に聞き、貴重なアドバイスを語りましたが、結果ノーマネーでした。
さて、見る限り加藤社長あたりイケそうな気がしましたが、全体的にダメ出しされて終わった結果となった抱き枕。3つの見解から推察していきたいと思います。
チャンコ1、アニメ抱き枕という先見の明
今後確実に拡大していくオタクマーケットの中で「誰も作ったことのないものを作りたい」と語る増田氏でしたが、ほとんど相手にされなかったこの抱き枕。
百戦錬磨の成功者である虎達に批判されたこの起業アイデアは果たして未熟なものだったのでしょうか。
しかし、現在になって抱き枕で調べてみると・・・
抱き枕とは
アニメやエロゲのキャラクター、実在するアイドル等の姿がプリントされた抱き枕カバーがオタクグッズの定番となったのは2006年末頃をされており、裏表を利用したデザインの違いや、寝具ということもあってムフフな絵柄が楽しめるものも多い。(ニコニコ大百科参照)
マネーの虎に出たのが2002年であることから、なんとその4年後には実際に流行っていました。
チャンコ増田氏の地道な活動が実を結んだのか、番組の影響で火が付いたのか、真相は分かりませんが、アイデアとしては正解だったと言えます。
オタクという時点で聞く耳を持たなかった堀之内社長は、普段は「儲かるならなんでもいい」と言っています。さらにその後は時代の流れに飲み込まれて倒産してしまった事実を見ると、オタクといえどこれからの新しいアイデアを受け入れる必要があったとも考えられます。結果論ですけど。
でも正直、あそこで堀之内社長が食いついて投資するイメージも湧きませんね。みんな「堀さんどうしたっ!?」ってなりそうです。
さらにチャンコ増田氏と一緒にビジネスしたり打ち合わせしている姿も想像出来ませんので、不成立になるべくしてなったような気もしますが、アニメ抱き枕に先見性があったことは認めなくてはいけない事実です。
チャンコ増田に時代が追い付いてきた 触ると喋る「痛スポ」
触ると「そこはダメェ」などの声が出る「痛スポ」という抱き枕が出てきました。
撫でる場所によってリアクションが違ったり、強く叩いたりすると怒ったりするそうでスゴいです。
結局見た目を気にしないで、本能に正直になることが一番ですよね。いいビジネスだと思います!・・・けどちょっと、いらないかな。。
チャンコ2、圧倒的な経験と実績
今までにノーマネーでフィニッシュしてしまった他の志願者達はこんな人達がいました。
- うどん屋を始めたいと言うが現在は牛丼屋でバイトをしている
- カナダの商品を日本で広めたいと熱く語るもカナダには一度も行ったことがない
- 仕事を辞めてまでこのビジネスに賭けているが、大した準備もしていない
これらのプレゼンが失敗した理由を見返してみると、ほとんどの人には「経験と実績がなかった」という共通点があったことに気付きました。
そんな志願者達に対して社長達もこんなことを語っていました。
- 上野社長「今日のあなたではなくて、今日のあなたを見て「今後伸びそうだな」と感じるわけであって、これから頑張りますじゃ遅い。今がどうなんだ」
- 高橋社長「何もやってないで来る人が多いけど、僕が見るのは希望する金額に応じてどれだけ動いてくれてるか。無駄なことでも行動してることでアピール出来る」
- 堀之内社長「ここに来る人みんな一等地に店を出したがるんだけど、なぜ今自分の出来る範囲からやってみないのかがわからない。屋台でもなんでもやってみればいいじゃない」
確かにその通りですよね。金があって店がなきゃ動けないなんて誰も信じれません。一見ムダと思えるようなことだろうと、自分で行動することでどれだけ情熱があるのかが分かります。
さて、チャンコ増田はどうでしょうか。
その業界についての知識はエキスパート。大手で働き経験を積んでいるし、グッズ販売も自分で出来るところからちゃんと行動に移している。そしてなにより3時間で200万円売るという文句なしの実績を作り上げているではありませんか。
例えばですが、これがラーメン屋だとしましょう。ラーメンはほぼ毎日のように食べ歩いて研究し、大勝軒で3年働いて修行をした。そしてまずは屋台から自分で初めて、一日100杯も売り上げた実績がある。
こんな志願者がきたら即マネー成立です。文句の付けどころがありません。
そして、今回のプレゼンはこのラーメン屋となんら変わりはありません。一つ違いがあるとしたら、ラーメンが抱き枕だっただけではないでしょうか。
誰もが知っている業界って印象がいいんですよね。友達が「カフェやるんだ」とか「洋服屋始めるんだ」などと言ってもすんなり応援出来ちゃいます。しかし、どこにでもあるようなアイデアで起業しても他の店と埋もれてしまうし勝ち続けることは難しいです。ハンバーガー店を始めてもマクドナルドに勝つことはほぼ無理ですよね。
だからこそすき間産業を探す事は大事ですが、すき間産業は批判されます。何故なら誰もがやっていない。どこにもないものだからです。
売れそうなアイデアは当たり前。売れなさそうな物が売れる道を見出すのが先見性
携帯電話がまだなかった時代、NTTが携帯電話という新しいビジネスを一緒に始める仲間を探し出しました。
しかし多くの人が声を揃えてこう批判したそうです。
- 「電話なんか家にあるからいらないだろう」
- 「外でも話せる?公衆電話があるじゃないか」
そして時は経ち、小学生からおじいちゃんまで、1人1台以上持つようになった現在。多くの人が「あの時携帯電話ビジネスやっときゃ良かった」と思っています。
携帯ビジネスで比較すると事が大きくなりそうですが、あの頃気持ち悪いと言われながらプレゼンした抱き枕ビジネスは、まさに携帯がなかった頃の携帯ビジネスではないのか。
そう考えるといたたまれない気持ちになりますね。
3チャンコ、セオリー通りの完璧な動機
ビジネスのアイデアの見つけ方やきっかけは
「自分が不便を感じているもの。強く不満に思っていること。そして、同じ思いの人がいること。」
これらのことが当てはまればビジネスとして成り立ちますし、自分のためでもあって誰かのためでもあるという、こんな動機が成功するセオリーとも言えます。
有名な例をあげると、Q&AサイトのOKWaveを立ち上げた兼元社長は昔、インターネットのことで分からないことがあった時に某掲示板で質問した時に、「そんなこと自分で調べろ!」と冷たくされたり、中傷を受けることもありヒドく傷ついたそうです。
その時に「ネット初心者でも誰でも気軽に投稿出来て、みんながやさしく回答してくれるような掲示板があればいいのに」と強く感じ、その後OKWaveを立ち上げ大成功しました。
よく「お金のために、社長になるために起業してはいけない。」といいます。なぜなら起業は目的ではなく手段。あなたの望みや想いを叶えるための手段の一つであるからです。
なのでまずは自分が強く感じる不満を探すこと。そしてそれが解決出来ること。さらに同じ悩みを抱えた人がいること。これこそが社会貢献であり、こういった思いが根底にあることが成功し続ける秘訣だと言います。
そして、チャンコ増田氏はこのビジネスのきっかけをこう語りました。
「僕彼女が32年いないんですよ。だけど家に帰れば大好きなアイドルと一緒に寝れるんです。そして僕と同じような人にも提供してあげたい」
この想いはこのようにまとまります。
- 強く感じている不満がある(彼女がいない)
↓ - 解決する方法がない
↓ - 変わりになるものはないか
↓ - 抱き枕
↓ - 同じ思いの人、欲しいという人がたくさんいる
どう考えても真っ当な動機ですし、ビジネスのセオリーにも適っています。
欲しいから作る!儲けたいでは成功出来ない
「抱き枕は男のロマン」と語るチャンコ増田氏は
「なんで作りたいって、欲しいから作りたいんですよ!!」
さらに、
「同じ想いを持った仲間たちのためにも抱き枕を作りたい!!」
と言いました。それはまさに、
おれ一人が良ければいいわけじゃないし金儲けがしたいわけじゃない。おれの求める成功は、自分の求める物を作り、そしてそれによってみんなが幸せになることだ!
と言わんばかりの熱い情熱を語りました。
今までの志願者、いや、起業したいという人のほとんどは「お金が欲しいから」だとか「儲けたい」だとか、そんな理由ばかりです。
しかし、マネーの虎の10年の歴史を見て明かされている通り、そんな理由で事業を始めた人達は、志願者、虎、関係なくのちに失敗していきました。
- フランスロール「そちら側(社長側)に座りたい」→成功したが脱税により逮捕
- ロコロール「起業の理由は)金儲けです」→店舗展開していったが売上が伸びず閉店
- 堀之内社長「儲かればなんでもいい」→資金がショートし倒産
- 安田社長「人よりいい生活がしたい」→マネーの虎終了後自己破産
そして、10年以上経った今でも成功し続けているのはこんな人達です。
- 世界一のパスタのレストラン「お客様の笑顔のため」→神奈川に4店舗まで増やし成功
- ペット水「動物たちを幸せにしたい」→契約店が60を超え成功
- 借金1億の家具屋「子供達に安全な家具を」→ネットショップも立ち上げ成功
- 岩井社長「頑張ってる人を応援したい」→順調
お金のために起業すると、始めは儲けるために良い物を頑張って作りますが、一度儲かったら頑張ることをやめて、さらに利益を上げる方に目を向けてしまいがちです。
誰かのために起業すると、「さらにもっと良い物を」と追求していくことになるので、時代の変化にも対応でき、その結果成功し続けることが出来ます。
まさにチャンコ氏はこの典型ですね。モノづくりの強いこだわりが強く伝わってきます。
まとめ ~抱き枕はどうすればマネー成立した?
以上の3点の推察からよく分析してみると、実はかなりレベルの高いプレゼンをしていたと言えます。
なのでさきほどのラーメン屋の例えをした通り、これが抱き枕じゃない物だとして、志願者がイケメンだったら成功していたかもしれません。
しかし、それでは社長達が間違っていたというでしょうか。それは違います。
何故なら、ビジネスにおいて正解も不正解もないからです。
まず、仮にマネー成立して抱き枕が流行ったとしても、増田氏がその経営を出来たのかは誰にも分かりません。今まで個人で売っていた商売と、1000万円かけて大きくした会社の経営はまったく別の物だからです。
また規模が大きくなると制限されることも多くなります。プレゼン時は「グラビアアイドルのプロダクションとの契約をしたい」と言っていましたが、そんな大きなメジャーの世界に入って行って、果たして「チャンコ増田が本当に欲しいと思える物」は作れたのかと思うと疑問です。
番組の大前提を覆してしまいますが、長い間マネーの虎を見てきて分かった事は、「マネー成立することが成功ではない」ということ。
お金を得て不幸になった人もいれば、お金以上のものを得て、のちの人生に繋げている人もたくさんいます。
マネー成立が成功でないなら何が成功なのか。
それは本当に好きな事をすること。そしてそれをやり続けられること。
=幸せになること以外成功とは呼べません。
そして現在ではそんなチャンコ増田氏も、抱き枕ビジネスをやり続けているようです。
まとめると、本当のビジネスとは見た目がカッコいいものでもなければ、儲かるアイデアではありません。
自分が本当に好きなものをやり、そして誰かにありがとうと言われるようなこと。
そう考えると、チャンコ増田氏はビジネスの成功者として学ぶべきところがたくさんある人だと言えるでしょう。
増田学(まなぶ)なだけに。